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「うまく訳せない時のその一文の対処法。」

質問文に「私大志望なので〜」のくだりがあったので、受験対策にしぼって回答をしてみました。
それでは早速御質問を御紹介することにいたしましょう。



御質問(QNo.3527926)

「うまく訳せない時のその一文の対処法。」

質問者:rouryarさん
例えば昨日読んだ文章で下線部訳の問題だったのですが

no one who cared about progress could ignore
the great advantage connected with group effort

という下線部だったのですが単語は一見簡単でしたし構造も簡単だったのですが
「進歩をcaredにする人々・・・?」
と特にcaredがよくわかりませんでした。
careは参考書では「関心」と訳していましたが実際に自分が解いてる時は「治療」みたいなイメージになっていました。
「え、治療・・・」
って感じです。
よく考えてcareを無視して考えて
「進歩に(  )する人々」
と考えて
「進歩に携わる人々」
ぐらいまではいけたのかなともおもいます。
実際に、このようにあえて知っている訳語をすててみて、ないものとして考えてその文脈に合うように訳語をつけてみるっていうのは有効であり、絶対的に必要な能力なのでしょうか。
もし必要ならば今後訓練していかなければならないのでお教えください。
私大志望なのでなんとかその一文の方向性を見失わずにあんまり時間をかけずに大意を把握できるようになりたいのです。

(質問者:rouryarさん)
この御質問に対する私の回答を以下に記します。

回答 ANo.4
回答者:hankyu8200

下線部訳の処置については、他の回答者様の示された段取りが的確であるということで、全面的に支持します。
ここでは受験テクニックの視点に絞ってみたいと思います。御質問の文面にありますような、
>文脈に合うように〜(中略)〜必要な能力なのでしょうか。
というのは選択式・記述式といった解答方法を問わず、正答率をグーンと上げる受験テクニックとしては非常に重要なポイントでして「合格する答案作成」には必須項目といえます。
というのも、rouryarさんが試験で答案を作成するということは、その答案を読む「採点者」の存在がある、ということですからね。
特に私立大学は国公立大学よりも受験者が多く、したがって採点を簡素化させるために「選択式」の問題を課すことが多いのですが、中には記述式として、御質問のような問題を課すことがあるわけですね。
記述解答の採点はいまだに人海戦術、すなわち人間が読んで採点することになっているはずです。
この採点官の人達の、記述解答の採点における心理状態とはどういうものか、これを知っていると、ひるがえってrouryarさんの答案作成時の心理状況は、かなりラクになるのではないかと思います。

どういうことか。
採点官は大概、白紙解答も含めて、膨大な量の答案に向き合うワケですね。
特に英語の場合は文理とわず選択率が高いために他の科目より答案の絶対数が圧倒的に多い、となると限られた時間内にこの膨大な量の答案を「サバかなくては」いけないことになります。
これって結構なストレスになるので、採点官を忌み嫌う大学関係者もいるといいます。
それやこれやの実状から、特に記述式解答の場合、基本的なことですが

  ○読みやすい字で書かれていること。
  ○こなれた文章で書かれていること。

といった少なくてもこの2点をクリアした解答は、多少の微妙な意訳があっても読み飛ばし、満点は無理にしてもかなり点をくれることが多いということです。

逆に読みにくい字で、なおかつ「直訳調」の解答ではどういうことになるか。
とたんにその解答の文脈のアラさがしをはじめて減点主義的な採点となり、最悪のケースでは大意は間違っていないにもかかわらず、0点となることもあるのだとか。
マークシート式の模擬試験では点が取れるのに、記述式の模擬試験でダメな場合は、たいがい、これが原因といっても過言ではありませんね。
それに、模擬試験の模範解答の全文訳のあざやかさ、あれにおったまげるという現象が本番の入試会場で起こってしまうとなると、目も当てられなくなってきますし。

こういう場合、受験生の立場ですと、大意は合っているんだから点をくれ、とは反論できませんから、したがって「読みやすい字でこなれた文章を書く答案作成」テクニックが最低限要求される、というワケなのです。
そのために、他の回答者様の御指摘にもあるような、

プロの翻訳家になるわけではなくても
自然な日本語で訳せるテクニック

が必要になってくるんですね。
ということで「訓練」というより本意ではないけども、採点者が満点つけてくれるような答案を作成できるスキルが身に付くんだ、ぐらいの気持ちでいいと思います。
>私大志望なので〜(中略)〜大意を把握できるようになりたいのです。
長文読解を課す大学を目指される受験生にとっては切実な課題ととらえられていますね。
しかもrouryarさんは、御質問の文面から、長文読解について、解答に関係なく、かつ設問対象になっていない英文は読み飛ばして「時間稼ぎ」できるようなので、あまり心配ないとは思いますが、老婆心ながら簡単に補足しておきます。
英語の文章というのは、複数のパラグラフで構成される場合は最初と最後のパラグラフが、また、一つのパラグラフの場合は最初と最後のセンテンスが、「結論」に相当する抽象的な内容になっていることが多いといわれています。
いわゆる日本語の文章でいう「起承転結型」に対して、「結論例証型」というワケですな。
ということはこの「結論」相当する部分を読めて理解ができれば、大意を把握できたことになるが、これを理解するには相当な「論理的な思考能力」と「豊かな教養」が必要になってくるんですね。

余談ですが、英語は1分間あたり4000語も5000語もの速読が効く、といわれるのは最初と最後の「結論」だけ読んで理解ができて、そのその間にある具体的な文章を読まずに済むという、いわゆる読み飛ばしが効くからなんです。
対して、最初の「結論」と最後の「結論」の間にくる「証明」の部分は、具体的な実例を、「結論」部分に比べて平易なボキャブラリーで展開していることが多いわけですね。

このことから設問の対象が、本文の「結論」部分なのか、「証明」の部分なのかによって、設問の難易度が大きく違ってくるといわれているのは、合点がいくと思います。
すなわち「結論」部分での「下線部和訳」問題の場合はその下線部分だけでは答えが出てこないことが多いわけで、したがって難しい、と。
当然そのあとの具体的な「証明」すなわち説明の「必要な部分だけ」を読んで解答することになります。
どこに「必要な部分」があるかは、大学受験のスペシャリストに委ねます。

制限時間内に問題を解決するスキルを十分養ったうえで、志望する大学に入学できるいいですね。
御健闘を御祈り申し上げます。



この回答に対する御質問者様の返礼文は、こちら。

「うまく訳せない時のその一文の対処法。」
http://okwave.jp/qa3527926.html?ans_count_asc=2



雨上がりの朝、江戸川の土手▼
P1010030.JPG

鉄橋を渡るのは武蔵野線205系電車。 (例によってクリックすると拡大します)




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k-sakamama

ご訪問ありがとうございます。
by k-sakamama (2008-02-16 23:54) 

いわもっち

あー、日本的な英文和訳。。
昔から、この手のテスト、苦手です。
ビジネスになると、適当にやっていけるんですけどね。
受験英語だし、まずはこれが登竜門ですしね。
テクニックを磨くことですか。。
by いわもっち (2008-05-09 08:44) 

みみちゃん

こんにちは。
おおむね同意です。
端的に言っちゃえば、一見矛盾するようですが、「英語の試験をパスするには、日本語の表現力を鍛えておきなさい」ってことですねw。
by みみちゃん (2008-05-09 11:21) 

chunta

昔は「直訳」が良いことだったのにね
最近は「意訳」でも良いのか~~
そっちは得意なんだけどな  笑
by chunta (2008-05-09 11:43) 

しんりゅう

もう、「きちんと訳す」知識もないので、完全な意訳派になっちゃいましたね~
受験で有効か?どうだろう、あまりにアーティスティックな表現だと思いっきり減点されそうでちょっとリスキーかなぁ…
by しんりゅう (2008-05-09 12:48) 

こうちゃん

僕は独学で勉強してNYに行きましたが
要は、訳も「センス」なんだと思います。
内容が伝われば、いいわけで、結構、NYでは
大雑把でした。
LONDONの方が、面倒でしたね。
by こうちゃん (2008-05-09 14:21) 

hankyu8200

◎◎気鋭の常連コメンテーターの皆様、
いつもお世話になっております。

☆ k-sakamama さん
お立ち寄りありがとうございます。

☆ いわもっち さん
ビジネスの世界では意志の疎通という目的を達成するための手段ですからして、その目的を達成できさえしていれば、手段にこだわる必要はないわけですし。
大学受験の場合ですと、意訳のテクニックといいますのは、なにも長文読解問題の下線部和訳だけではなく、和文英訳のときにボキャブラリーが思いつかない時の苦肉の秘策として中学校で習うような単語を組み合わせて解答する際にも威力を発揮します。

☆ みみちゃん
そういうことです^^

☆ chunta さん
なので、たとえば chunta さんの御子息がこれから中学や高校で世話になるであろう担当の英語教師のレベルをお知りになる時に、このテクニックが応用できるわけですね。
すなわち、意訳(異訳に非ず)してこなれた日本語の和訳をもって予習して行き、授業や添削を通して、その教師が誉めてきたらば「まとも」、もっと単語の意味を出しなさいと言ってきたらば「まともじゃない」という判断が利くんです。
私は、ダメ教師に当たってしまったので、わざとこなれた日本語で予習していって、案の定教師にバッサリ切られたら、
「先生は、英語は名詞中心、やまと言葉は動詞中心の言葉の並べ方なのは語学的に常識ですよね。
であれば、名詞的な言葉を並べた直訳を同士の意味に置き換えて訳す意訳をしていくのが、まともな翻訳というものではないのですか」
とやり返したことがあります(笑)。
するとくだんの教師は
「翻訳なんかする必要はない。だいたいの意味をつかめればそれでいいんだ。」
というので
「授業料もらっておきながら、そんな乱暴なことをおっしゃるんですね。」
といって、その授業を放棄したことがあります。
だって、その程度のレベルの授業であれば、こちらの持っている時間がもったいないと思ったからなんです(笑)。

☆ しんりゅう さん
アハハハ、なるほど。
>あまりにアーティスティックな表現
度が過ぎますと「異訳」になっちゃいますものね♪
by hankyu8200 (2008-05-09 14:35) 

hankyu8200

☆ こうちゃん先生!
独学となると、ご親戚に英語を母国語とされる方でもいらっしゃらないとなると、かなり御苦労なさったのではないかな、と推測されます。
実用英語と受験英語の根本的な違いは、上にあります、いわもっちさんへの返答文に述べたとおりでございます。
by hankyu8200 (2008-05-09 14:38) 

okko

小説の翻訳家業やっていましたから、回答は的を射ていると思います。
「先ず、全文を、分からない言葉があっても飛ばして読むこと。
誰がこの文章を読むかを考えること。文脈の前後関係から、自然と分からなかった単語の意味も理解できる、それを分かり易い日本語にする、」  いやいや、厳しい訓練を受けました。直訳は最悪ですね。
by okko (2008-05-09 15:25) 

hankyu8200

☆okkoさん
いやいや、であるがゆえに、だからこそ、okkoさんのお書きになる文章は明晰でわかりやすいなぁと思うわけです^^
by hankyu8200 (2008-05-09 15:45) 

SilverMac

優れた翻訳家ほど日本語の表現力が豊ですね。
by SilverMac (2008-05-09 16:37) 

OJJ

まともな英語まるでだめ・・(涙)! 異訳一点張りで・・・
通じたのか(相手が)諦めたのか・・・未だ生きていますヨ
by OJJ (2008-05-09 16:50) 

hankyu8200

☆ SilverMac さん
おっしゃるとおりですよね♪

☆ OJJ さん
アハハハ、またまたぁ〜。
何をおっしゃいますかいなぁ〜。
生きているということは通じる英語をお話しになるということなワケでしょう?
by hankyu8200 (2008-05-10 14:31) 

みゅう

結局は日本語の表現力がいかに豊かということにつながってくるんですね。
私も英語が苦手だったので、もっと早くこのことを知っていれば(^_^;)
by みゅう (2008-05-10 15:32) 

hankyu8200

☆ みゅうさん
おっしゃるとおりでして、いま幼児期から英語教育をやらせている御家庭も多いと聞きますけど、自分ところの母国語さえまともにできないとなると、効果や成果は半減するどころか、コミュニケーション不全という深刻な文化的後遺症をもたらす、という研究結果も出ていますし。
by hankyu8200 (2008-05-11 11:39) 

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