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「職業の将来について。」不具合対応改訂版

殊勝にも(!)、進路相談の回答例です。
このように、文面からしてまともな質問はトコトン親身になってあげたくなるものです。
では早速御質問を見ていくことにいたしましょう。



御質問(QNo.2978619)

「職業の将来について。」

質問者:hasebe375さん
毎度お世話になっています。
この間高校に入学し、高校生活の厳しさを味わっている高校一年生の自分ですが、最近自分の将来について悩むようになりました。
自分の学校はこの夏に文理選択をしなければならないのですが、将来検察官を目指そうと思ってる自分は文系を目指そうと思っています。
ですが、これからの日本の将来を考えたときに「検察官」を目指す、というのはどうなのだろうか、と思いました。
というのもこの間の朝日新聞の社説を見ると、地球は20年後には水不足に陥るなどと書いてありました。
さすがにそれは・・・と思いましたが、それでも3〜40年以内にはそうなるだろうとは自分も思いました。
その他にも色々な地球環境の変化によってこの先どうなるかさっぱり分かりません。
そこで思うのは、将来的に「日本の検察官」に未来はあるのでしょうか?
グローバル社会と言う中で日本の中だけ、と言う仕事の未来は・・・
いえ、検察官だけではなく「日本」そのものに未来はあるのでしょうか?
ある先生に聞いた所、日本の経済は30年後ぐらいに不景気を向かえ、もし一般企業に就職した場合、解雇される・倒産する恐れがあります。
将来社会のために尽くしたいと思っている自分としては、解雇されて流浪人になるのは避けたいです。
また、自分は検察官だけではなく昔から父親の影響で物理や化学、地学に興味があったので、理系に進むのも道では?とも思います。
そのような道に進むのであれば研究者になりたいと思っています。
研究者と言う仕事はおそらく自分にあっているようにも思うし、日本のためにも貢献でき、世界の中で活躍できる仕事でしょう。
そんな理由から理系もいいかな・・・とも思うのですが、
ですが、検察官は公務員と言うことから解雇になるようなことはないと思います。
狭き道ですが・・・
正直な所、自分は解雇ということを避けたいだけなのかもしれません、
大事が起こっているのに何も出来ないでいるというような状況になりたくないのです。
そこで質問です。

(1)検察官と言う仕事は
  将来的にどうなのか?
(2)この先重要になりそうなな
  職業はなにか?

読みにくい文ながら、最後まで読んでいただきありがとうございました。

(質問者:hasebe375さん)
この御質問に対する私の回答を以下に記します。
なお、この御質問の回答はスペース上、一回答に編集させていただきます。

回答 ANo.4・5
回答者:hankyu8200

御質問の文面は、hasebe375さん御本人の迷いからくる「文脈のねじれ」を割り引いて考えても、高校1年生にしては非常にまともで「志」が明確ですし、しっかり分析した上での明確な根拠をふまえたレトリック豊かな文章展開になっていて、立派ですね。

高等学校の進路指導といいますのは、来る少子化時代にあっても学校そのものの廃校を回避するのが目的で、大学進学率を高めるために、将来の職業まで決めつけさせてしまうような指導をする傾向があるようです。
しかし、hasebe375さんが今、まさにこの時点で、決断された職業が実際に大学あるいは大学院まで卒業した時点で同じ社会的評価である確率は、あるとも言えず、ないとも言えないという、非常に未知数なわけです。
確かに御質問にありますような
>検察官は公務員と言うことから解雇になるようなことはない
というのは、現時点では「ほぼ」そのとおりではありますが、これが将来の永きにわたってその認識が続く保証はどこにもありません。
近年の検察官を含む司法従事者の不祥事が、あまりにも巧妙かつ悪質化傾向をたどっていて、逮捕者も出ています。
当然これに対する処罰の徹底を検察官適格審査会に求める動きがあるのも否定できない事実といったところです。
国民に対する背信行為、国益を損する行為については、たとえ身分が検察官であろうと処罰の挙げ句、下野させるというのは、これからの時流となるはず。
進路の選択に失敗しないための「ひきしろ」を考えるのは賢い、とはいえますが、No.3の回答者様がおっしゃっておられますように、この時期に「進路を決めつける」ことは、あまり意味がないように思います。
むしろ解雇されても悠然と人生を全うできるだけの「経済力」「知識・常識・教養にとどまらない物事を正しく理解する力」「論理的思考能力」「判断力」そして「実行力」…。これだけのものをフル動員して

「解雇される不安」に打ち勝つ「能力」

を粛々と養っていくのが、いまのhasebe375さんにとっての一番の「人生への課題」なのではないかと思います。
hasebe375さんが自身で危惧されているように、確かにどんなに恵まれている、といわれるような人生であっても、いつも「日の当たる道」ばかり通るわけではないわけですね。
「下り坂」にさしかかった時にどう対応するか、この対応次第でその先の人生「日の当たる道」に返り咲くか、または転落するかの岐路となるわけで、この時、上に挙げた5つの力が、正に、モノをいうことになるでしょう。
職業を選択する際には、このような視点から、時代の流れに応じて重要視される、あるいは最先端と評価される職種になるものもあれば「過去の遺物」扱いになる職種まで、いろいろあるのだ、ということを前提に御考えになれば、自然と答えが出てくるはずであります。

実は私の友人が経営する会社の顧問弁護士が「ヤメ検(検察官を退官したあと転身した弁護士)」なんだそうで、数日後にこの3人で食事会を開くっていうんで打ち合わせの電話をしていたんで、ついでに訊いてみたんですね。
おおよそこの「ヤメ検」弁護士曰く、大学から(法科大学院経由で)司法試験合格を果たすまで、自宅、図書館、教室の3カ所の移動に忙しいとのこと。
このトライアングルより外れた場合は、司法試験も正に、はずれてしまう(不合格になる)というジンクスすらあるそうで、とても遊ぶどころではなかったそうです。
つまり、人生多感な若い時期にいろんな意味での「遊び」を知らないままに裁判官や検察官になってしまったために、後になって常識では考えられない、明らかに時代錯誤な判決が出てしまったり、冤罪裁判に発展させてしまったりするという体たらく。
すなわち視野が狭いがゆえにロクな結果が出せない、あるいは社会の進歩に司法が対応できていない部分が多いとのことでした。
また、守秘義務がかなり厳しく徹底されるため、いいたいこともあまり言えないのだそうです。
これは退官して弁護士に転身しても、いわゆる紳士協定のようなもので守らされるのだとか。
確かにギャラの良さや身分保障の点ではよかったが、公私共々その身分保障に対する、いわば品格維持のために、常に監視されているようなもので、気の抜けない職業なんだ、というのが「ヤメ検」弁護士の弁。
ちなみに弁護士、司法資格をもつことで任官される裁判官、検察官、税理士、公認会計士、医者、教師…といった職業は単に資格さえあれば務まるわけではなく、その人の「人間性」が大きく仕事の結果に関わってくると言われているようです。

話は変わって、まともに理系を目指すには、高校1年の段階ですと、すでに理系科目の平均偏差値がおおよそ65以上ないと、安定した研究者を目指すのは厳しいと言われています。
ただね、社会に貢献できる職業や世界で活躍できる仕事っていうのは、綺麗にスッパリと文系か理系かに分かれるってもんではないんですね。
環境問題一つとっても、このことがはっきりと言えます。
御質問の文面にあるような水資源の渇枯の場合、この対策技術は確かに理科系の技術が必要ですが、これが日本国内だけ解決できてもあまり意味がないわけですね。
世界的な需要が見込めるとなると、世界各国から引き合いが来る。
しかしこの技術が軍事に転用できると判明したと仮定した場合、カネさえ出せば即輸出、というわけにはいかなくなるんですね。
そこで国際政治学、国際法の視点が生きてくるんです。
あるいはそうした先端科学技術に無知もしくは理解がない国に対して広告宣伝活動を行うのであれば、これは文系の中でも芸術系の素養が生きてくることになるでしょう。
このように、環境問題を考えるような、ある物事に係る「問題を解決する」能力について、文系理系の分類は、あまり意味がないということなのです。

さらにチョイと話を広げますと、この「問題解決能力」が高度に備わる人間は、例えば公務のみならず私企業たる会社から解雇されることは犯罪などの反社会的行為を犯さない限り滅多にありません。
すなわち、高度な「問題解決能力」と「学識」があれば日本国内のみならず、世界を相手に活躍できる機会が飛躍的に高まってくるということです。
この辺りは、福沢諭吉著「学問のすゝめ」(岩波文庫版か、もしくは現代語訳版として三笠書房・檜谷昭彦訳)の精読を、まさにおすゝめします。

あせることはありません。
ゆっくりと、しかし先送りせずに、確実に考えてみて下さいね。

hasebe375さんが、社会に貢献できる人間として大成されることを御祈り申し上げます。



この回答についての御質問者様の返礼文は、こちら。

「職業の将来について。」



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▲江戸川西岸土手を走る、三郷幸手自転車道


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